NO,12
仮想井戸半径の採用値は
投稿者:名無し 投稿日: 6月19日(土)07時10分35秒
地下水位の高い箇所(GL-1.0m、K=9.4E-02)で下水道の設計をしております。
建込簡易土留めによる4m程度の掘削の補助工法としてウェルポイントを検討しております。
ここで仮想井戸半径の算出ですが、検討領域(1m*30m)からr=9.8mを採用すると、ウェル本数が非現実的な本数となります。
ここで仮想井戸半径をウェルポイント半径r=0.025mとして採用している計算例がありましたので、再計算すると現実的な本数となりました。
設計の考え方として、どちらが正しいのでしょうか。
Re:仮想井戸半径の採用値は
投稿者:利光(管理人) 投稿日: 6月19日(土)22時28分36秒
大変難しいご質問をいただき、頭を悩ませました。
本件の設計条件はとても厳しいものなのです。
透水係数が1E-1cm/sec程度低下水位量がS=3m以上ですから、所要排水量は極めて大きなものになるでしょう。
ウェルポイント1本当たりの揚水量は毎分40リットル以上です。
私の身近な所では愛知県一宮市、稲沢市一帯の地下水条件に似ています。
恐らく、掘削溝片側にウェルポイントを一列配置しただけでは十分な水位低下量が得られないでしょう。
土質条件によっては鋼矢板土留を使いたくなる場面です。
「掘削幅の狭い、細長い掘削形状だからウェルポイントを掘削溝の片側に1列配置すればよい」との発想は通用しません。
ご質問文中の「非現実的」、「現実的」との発想は確たる根拠がなければ危険です。
さて、細長い平面形状の検討領域に対する設計方法について、私見を述べます。
■仮想井戸について
検討対象領域を円形の井戸に置き換えたものを仮想井戸と呼びます。
井戸理論を適用するためのモデル化のひとつです。
ここで問題となるのが、検討対象領域の形状です。
本件のような細長い形状に仮想井戸の考え方を当てはめてもよいのか?
誰もが抱く疑問です。
ウェルポイント工法便覧では適用条件を 短辺:長辺=1:3 までとする旨、記載されています。(その根拠は不明ですが・・・・。)
やはり、「極端に細長い形状の検討領域を仮想井戸にモデル化する」ことにはムリがありそうです。
なお、ディープウェル工法の場合は、群井戸の式で形状に関する評価を行いますので、神経質になる必要はありません。
それでは、どのように設計すればよいのか?
■細長い検討領域に対する設計手法
文献には様々な設計手法が掲載されています。
つまり、定まったものが無いのが実情なのです。
現状は以下のとおりでしょう。どれを使うかは、担当者の判断です。
1.何も考えずに仮想井戸にモデル化して単井戸公式を適用する
一番楽な方法ですが、検討結果を適切に評価する能力が要求されるでしょう。
2.両端部を仮想井戸にモデル化し単井戸公式を、中間部には2次元浸透流公式を適用する。
理論(説明)にムリが無いので、最も適切な設計方法かもしれません。
3.スリット排水の公式等を適用する
難解でもあり、実用性に欠けるかもしれません。
ご質問文中「仮想井戸半径をウェルポイント半径r=0.025mとして採用している計算例」とあるのは上記2.の手法を拡張(?)したものだと思います。
この手法はウェルポイントを掘削領域の片側に1列配置し、水位低下の影響によって掘削領域内の水位を低下させようとの発想に基づいているものです。
この手法は掘削位置に対する低下水位の評価が行われませんので適用に当たっては注意が必要です。(一般的な設計手法ではありません)
本件のように透水係数が大きな地盤の場合、十分な水位低下量が得られない可能性があります。
■お問い合わせに対する回答
ご質問文中「設計の考え方として、どちらが正しいのでしょうか。」に対する答えは、「検討結果が経験的に見て妥当な内容であれば、正しい」です。
ウェルポイント工法は経験に依存する部分が多く、計算結果どおりに行かないことが多々あります。
計画にあたっては設計内容の妥当性などを的確に評価することが要求されるのです。
昨日の件、試算してみました!
投稿者:利光(管理人) 投稿日: 6月20日(日)20時19分49秒
昨日の件、心配なので試算してみました。
検討領域を軸対称浸透流モデルと2次元浸透流モデルに分割する方法で試算した結果は次のとおりです。
なお、算定には水替工法勉強会のウェルポイント設計用ワークシートを使用しました。
■設計条件
ウェルポイントは検討領域全周に配置するものとして試算しました。
検討領域長 Lx=31.0m(掘削線から0.5mの位置にWPを配置するため)
検討領域幅 Ly= 2.0m(掘削線から0.5mの位置にWPを配置するため)
自然水位 WL1=GL-1.00m
所要低下水位 WL2=GL-4.00m
帯水層下面深度 DL =GL-10.00m(低下水位の3倍相当 DL=3.0m*3+1.0m=10.0m)
透水係数 K=9.4E-2cm/sec
影響半径算定式 R=3000*S*√(K/100)
WP揚水能力 毎分40リットル
ヘッダパイプ長 Lh=66.0m(全周 31.0m*2+2.0m*2=66.0m)
ウェルポンプ φ150mm*2.5m3/min*22KW
■計算結果
軸対称部揚水量 Q=1.48m3/min
2次元部揚水量 Q=0.27m3/min
合計揚水量 Q=1.75m3/min
WP本数 Nw=83本
WP間隔 Lp=0.8m
ウェルポンプ台数 Np=2台
いかがでしょうか?
この結果は私のイメージに近いものです。
しかし、掘削深度、地下水条件を考えると、土留工法は鋼矢板土留が適当ではないでしょうか。。。
みなさまのご意見をお聞かせください。